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マザーグースを知れば、英語も映画も物語もより深く理解できる!?

マザーグースを知れば、英語も映画も物語もより深く理解できる!?

マザーグースとは、イギリスやアメリカを中心に親しまれている、英語の伝承童謡です。聖書やシェイクスピアと並んで、英米人の教養の基礎となっているとも言われており、しばしば映画や物語などに引用されるほどです。なので、マザーグースを知っていないと、ストーリーを理解できなかったり、充分に楽しめないことがあるかもしれません。

そこで今回は、マザーグースの基本知識と代表的な唄をご紹介しますので、ぜひ今後の英語学習や、英米文化の理解にお役立てください。

 マザーグースについて

マザーグースとは英語の伝承童謡の総称です。イギリスではナーサリー・ライム (Nursery Rhymes)の呼び名の方がメジャーです。特定の作者がいるわけではなく、昔話のように親から子へと伝えられてきたものです。イギリス発祥のものが多いですが、アメリカ発祥のものもあり、唄の数は600から1000以上あると言われています。「童謡」と訳されていますが特定のメロディを持たないものもあります。

 様々な形式があるマザーグース

童謡の形式としては「なぞなぞ唄」、「子守唄」、「遊戯唄」、「早口唄」、「物語性のある唄」、「積み上げ唄」、「暗記歌」など様々な種類があります。それぞれの形式での代表的な唄をご紹介していきたいと思います。

 なぞなぞ唄「ハンプティ・ダンプティ」

Humpty Dumpty sat on a wall,
Humpty Dumpty had a great fall.
All the king's horses and all the king's men
Couldn't put Humpty together again.

ハンプティ・ダンプティが塀に座った
ハンプティ・ダンプティが落っこちた
王様の馬と家来の全部がかかっても
ハンプティを元に戻せなかった

参照:Poetry Foundation

ハンプティ・ダンプティとは何でしょうか?というなぞなぞになっており、答えは「卵」です。この童謡とキャラクターは、ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』をはじめとして、様々な文学作品や映画、演劇、音楽作品などにおいて引用されています。ちなみに"Humpty Dumpty"は危うい状況や、ずんぐりむっくりの人物を指す言葉としても用いられています。

子守唄「ハッシュ・リトル・ベイビー」

Hush, little baby, don't say a word,
Mama's going to buy you a mockingbird.
And if that mockingbird don't sing,
Mama's going to buy you a diamond ring.
And if that diamond ring turns brass,
Mama's going to buy you a looking glass.
And if that looking glass gets broke,
Mama's going to buy you a billy goat.
And if that billy goat won't pull,
Mama's going to buy you a cart and bull.
And if that cart and bull turn over,
Mama's going to buy you a dog named Rover.
And if that dog named Rover won't bark,
Mama's going to buy you a horse and cart.
And if that horse and cart fall down,
You'll still be the sweetest little baby in town.

しーっ、坊や、静かにしていて
ママがマネシツグミを買ってあげるから
もしマネシツグミが歌わなかったら
ママがダイヤの指輪を買ってあげる
もしダイヤの指輪が真鍮(しんちゅう)になってしまったら
ママが鏡を買ってあげる
もし鏡が割れてしまったら
ママが雄ヤギを買ってあげる
もし雄ヤギが働かなかったら
ママが荷車と雄牛を買ってあげる
もし荷車と雄牛がひっくり返ってしまったら
ママがローヴァーという名前の犬を買ってあげる
もしローヴァーが吠えなかったら
ママが荷馬車を買ってあげる
もし荷馬車と馬が倒れてしまっても
あなたは街で一番かわいい私の赤ちゃん

参照:Poetry Foundation

歌詞はナンセンスですが、wordとmockingbird、singとringのように韻を踏んでいます。声に出してみるとその心地よいリズムがわかります。 "hush"とは赤ん坊をあやすときの言葉です。日本語の場合では「しーっ」という感じです。

※マネシツグミ:他の鳥類の鳴声の真似ができる、長い尾を持つ灰色と白の米国南部産の鳴鳥。

 遊戯唄「ロンドン橋落ちた」

London Bridge is broken down,
Broken down, broken down,
London Bridge is broken down,
My fair lady.
(抜粋)

ロンドン橋 落ちた
落ちた 落ちた
ロンドン橋 落ちた
マイ・フェア・レディ

参照:世界の民謡・童謡

この唄は子供たちの遊びに用いられます。2人の子供が向かい合って手をつなぎ、腕を高く上げ、その中を他の子供が歌いながら通り、歌詞の"My fair Lady"のところで腕を上げていた2人が腕を下ろし通っていた人を捕まえる、という遊びです。日本にも「通りゃんせ」という同じ遊びがあります。

 早口唄「ピーター・パイパー」

Peter Piper picked a peck of pickled peppers.
A peck of pickled peppers Peter Piper picked.
If Peter Piper picked a peck of pickled peppers,
Where's the peck of pickled peppers that Peter Piper picked?

ピーター・パイパーは1ペックの酢漬けの唐辛子をつまんだ
ピーター・パイパーがつまんだ1ペックの酢漬けの唐辛子
もしピーター・パイパーが1ペックの酢漬けの唐辛子をつまんだら
ピーター・パイパーがつまんだ酢漬けの唐辛子はどこにあるか?

参照:MentalFloss

声に出して言ってみるとよくわかりますが、かまずに正確に言うのがとても難しい早口言葉です。早口言葉を意識したものなのでナンセンスな歌詞が多いマザーグースの中でもがナンセンスさが際立っています。ちなみに"peck"とはヤード・ポンド法における体積(容積)の単位で、1peckはおよそ9リットルに相当します。

 物語性のある唄「ジャックとジル」

Jack and Jill went up the hill.
To fetch a pail of water.
Jack fell down and broke his crown,
And Jill came tumbling after.
Up Jack got, and home did trot,
As fast as he could caper,
To old Dame Dob, who patched his nob
With vinegar and brown paper.

ジャックとジルは丘を登った
手桶で水をくむために
ジャックは転んで頭に大怪我
ジルも続いて転げ落ちた
立ち上がるとすぐにジャックは
家に走って戻っていった
老ダブ夫人は、ジャックの頭に
お酢の薬を塗ってくれた

参照:Words for Life

JackとJillとは日本語でいう「太郎と花子」のような典型的な男の子と女の子の名前です。
英語には "Every Jack has his Jill." ということわざがあります。「どんな人にも、その人にふさわしいパートナーがいる」という意味で、日本のことわざの「割れ鍋に綴じぶた」がこれに当たります。

 積み上げ唄「これはジャックが建てた家」

積み上げ唄とは歌詞に後からどんどん歌詞を継ぎ足していく言葉遊びのことです。

This is the house that Jack built.
(これはジャックの建てた家)

This is the malt,
That lay in the house that Jack built.
(これはジャックの建てた家に
ころがってた麦芽)

This is the rat,
That ate the malt,
That lay in the house that Jack built.
(これはジャックの建てた家に
ころがってた麦芽を
食べたネズミ)

このようにどんどんと歌詞を足していきます。最終的に以下の形まで歌詞が継ぎ足されていきます。

This is the farmer sowing his corn,
that kept the cock that crowed in the morn,
that waked the priest all shaven and shorn,
that married the man all tattered and torn,
that kissed the maiden all forlorn,
that milked the cow with the crumpled horn,
that tossed the dog,
that worried the cat,
that killed the rat,
that ate the malt
that lay in the house that Jack built.

これはジャックが建てた家に
あった麦芽を
食べた鼠を
殺した猫を
悩ました犬を
突き上げた角の歪んだ牛の
乳をしぼった心細そうな乙女に
くちづけした衣類が破けてぼろぼろの男の
結婚式を行った髭も頭もきれいに剃った牧師を
朝鳴いて起こした雄鳥を
飼っていた麦を蒔いている農夫

修飾語がうしろに来る英語の性質上、順番が日本語訳とは反対になっています。 また原文では、corn、morn、shorn、torn、forlern、hornが韻を踏んでおり、同じくcat、rat、malt、builtが韻を踏んでいます。

 暗記唄「月曜日に生まれた子供は」

Monday's child is fair of face,
Tuesday's child is full of grace,
Wednesday's child is full of woe,
Thursday's child has far to go,
Friday's child is loving and giving,
Saturday's child works hard for a living,
And the child that is born on the Sabbath day
Is bonny and blithe, and good and gay.

月曜日生まれのこどもは器量がいい
火曜日生まれのこどもは品がいい
水曜日生まれのこどもはべそっかき
木曜日生まれのこどもは苦労をし
金曜日生まれのこどもは愛情豊かで
土曜日生まれのこどもは働き者で
日曜日に生まれたこどもはね、
可愛くて、明るくて、気立てがいい

参照:Words for Life

これは曜日を暗記するための唄です。日曜日に生まれた子どもを特別視するのはキリスト教の安息日に由来するものです。占いなどで生年月日を使うことはあっても曜日を気にする習慣は日本にはあまりありませんね。ちなみにこの唄も月火、水木、金土、日とそれぞれ韻を踏んでいますね。

 残酷で怖い歌詞のマザーグース

My mother has killed me,
My father is eating me,
My brothers and sisters sit under the table,
Picking up bury them under the cold marble stones

お母さんが私を殺して
お父さんが私を食べている
兄弟たちはテーブルの下で私の骨を拾い
冷たい大理石の下に埋めたの

どうしてこのような歌詞かというと、マザーグースには子供に対する戒めやしつけの意味もこめられており、そのためこのような怖い歌詞のものもあると考えられています。この場合はお父さんやお母さんの言うことを聞かないと怖いことになるよ、という意味です。

 おわりに

マザーグースはいかがでしたか?イギリスやアメリカの人は、マザーグースと共に育ったと言っても過言ではありません。またマザーグースにちなんだ引用や言い回しは、あらゆる分野に見られます。『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』『メリー・ポピンズ』『秘密の花園』『指輪物語』などはその代表例です。マザーグースの知識があれば、より深い英米文化の理解につながりますよ。