負け犬、泥棒猫、藪蛇、狸寝入り、野次馬など、動物を用いた慣用表現は日本語にたくさんありますよね。
英語でも同じように、動物を用いた慣用句やことわざがたくさんあります。このような表現はあらかじめ学んでおかないと、会話の中で「?」となってしまうことが多いです。
また、こうした表現を知ることで、英語圏でその動物に対してどのようなイメージが持たれているかを知ることもできます。動物を用いた慣用表現を学んで会話の幅を広げてみましょう。
“dog”(犬)を用いた表現
A dog’s life(悲惨な生活)
- He's leading a dog's life.
「彼は悲惨な生活を送っている」
die like a dog(惨めに死ぬ)
- He died like a dog due to poverty.
「彼は貧乏のために惨めに死んだ」
dog-eat-dog(食うか食われるかの競争)
- If you become a pop singer, you will be living in a dog-eat-dog world.
「人気歌手になるということは、食うか食われるかの世界に身を置くということだ」
go to the dogs(駄目になる、破滅する)
- The weak-willed are prone to go to the dogs.
「意志の弱い人は身を滅ぼしやすい」
sleeping dog(面倒なこと)
- It is better to let sleeping dogs lie.
「(面倒なことにならないように)そっとしておく方がいい」
“cat”(猫)を用いた表現
enough to make a cat laugh(とても滑稽な)
- To see him running is enough to make a cat laugh.
「彼が走る姿はとても滑稽だ」
lead a cat and dog life(仲の悪い生活を送る)
- The girl led a cat and dog life with him.
「その少女は彼と喧嘩ばかりしてきた」
日本語では「犬猿の仲」という表現がこれに当てはまります。
rain cats and dogs(土砂降りの雨、激しい雨)
- It began raining cats and dogs.
「土砂降りの雨が降り出した」
猫と犬が喧嘩をして騒いでいる様子を表しています。
cat got your tongue(黙り込む)
- Has the cat got your tongue?
「どうして黙り込んでいるの?」
怯えて黙る子供に対して使います。
bell the cat(ネコの首に鈴をつける=進んで危険なことを引き受ける)
- The question is how we will bell the cat.
「問題はどうやって難局に当たるかだ」
“bird”(鳥)を用いた表現
like a bird(気が楽・心配事がない)
- I feel free like a bird now that I have finished my examinations.
「試験が終わったので、気が楽だ」
eat like a bird(小食である)
- She is very slim because she eats like a bird.
「彼女は小食なのでとても痩せています」
for the birds(くだらない、つまらない)
- His idea is always for the birds.
「彼のアイデアはいつもくだらない」
give someone the bird(野次を飛ばす、罵倒する)
- The spectators gave the player the bird because of his error.
「観客はその選手のエラーに野次を飛ばした」
“horse”(馬)を用いた表現
work like a horse(がむしゃらに働く、馬車馬のように働く)
- I am too old to work like a horse.
「もう馬車馬のように働くような年齢じゃない」
eat like a horse(大食である)
- It is amazing how she eats like a horse and yet remains so skinny.
「彼女は大食いなのに、スリムな体を維持していることが不思議です」
beat a dead horse(話を蒸し返す、むだ骨を折る)
- Don't try to beat a dead horse.
「済んだ話を蒸し返すな」
死んだ馬にむちを打っても無駄なことがその由来です。
horse of a different color(全く違うもの)
- That's a horse of a different color.
「それは全く別の話だよ」
“cow, bull”(牛)を用いた表現
cash cow(金のなる木)
- The actor became a cash cow for the company.
「その俳優は会社にとって金のなる木となった」
a bull in a china shop(はた迷惑な乱暴者、不器用者)
- Nobody wants to work with a bull in a china shop.
「誰も人に迷惑をかける乱暴者と働きたくはない」
“china shop” とは陶器店のことで、陶器店で暴れる牛のようにはた迷惑ということです。
cock-and-bull story(ばかげた話、でたらめ)
- Don’t believe his ridiculous cock-and-bull story.
「彼のでたらめな話を信じないで」
kill the fatted calf(最上の歓待をする)
- We have to kill the fatted calf for the special guest.
「特別なゲストのために最上の歓待をしなければならない」
“calf” は仔牛のことで、聖書が元になった表現です。
その他の動物を用いた表現
like a bat out of hell(地獄からのコウモリのように=猛スピードで、大急ぎで)
- He ran away from there like a bat out of hell.
「彼は猛スピードでそこから逃げた」
crazy like a fox(狐のようにクレイジー=抜け目のない、海千山千の)
- Our boss is crazy like a fox.
「私たちの上司は抜け目がない」
drink like a fish(魚のように酒を飲む=大酒を飲む)
- The big man ate like a horse and drank like a fish.
「その大男は大量に飲み食いした」
separate the sheep from the goats(羊とヤギを区別する=善人と悪人(役に立つ人と役に立たない人)を区別する)
- Our task is to look through the list and separate the sheep from the goats.
「私たちの仕事はリストを見て役に立つ人と役に立たない人を区別することだ」
pigs might fly(豚が飛ぶかも=奇跡が起こるかも)
- He passed the exam! Pigs might fly!
「彼が試験に通った!奇跡が起こるかも!」
as poor as a church mouse(教会のねずみのように貧しい=ひどく貧しい)
- Her childhood was as poor as a church mouse.
「彼女の子供時代はひどく貧しかった」
教会のねずみは食べるもの何もないという意味です。
make a monkey out of someone(誰かを猿のように扱う=誰かを馬鹿にする)
- He made a monkey out of the teacher in class.
「彼は授業中に先生を馬鹿にした」
動物を用いたことわざ表現
英語のことわざにも動物が使われる表現が多くあります。同じ意味の日本語のことわざと比較してその違いや共通点を楽しんでみてはいかがでしょう。
- Even a worm will turn.
「虫であっても向かってくる=窮鼠猫を噛む」 - The fox is known by its/his brush.
「狐は尾で分かる=十人十色」 - To kill two birds with one stone.
「一つの石でニ羽の鳥を得る=一石二鳥」 - Better be the head of a dog than the tail of a lion/horse.
「ライオン/馬のしっぽよりも犬の頭の方がよい=鶏口となるも牛後となるなかれ」 - Catch your bear before you sell its skin.
「熊の皮を売る前にクマを捕れ=捕らぬ狸の皮算用」 - Great barkers are no biters.
「吠えたてる犬は噛みつかない=負け犬の遠吠え」 - Wake not a sleeping lion.
「眠っているライオンを起こすな=寝た子を起こすな」 - You cannot sell the cow and drink the milk.
「牛を売って牛乳は飲めない=二つに一つ」
おわりに
日本語にも英語にも多くの動物を用いた表現がありますが、家畜やペットとして人間の身近にいた動物ほどその慣用表現は多いようです。
言葉とは人の歴史を背景に、それこそ生き物のように変化をし続けているものだということがよくわかります。文化の違いが言葉の違いを生むこともあれば、共通した文化が同じような言葉を生むこともありえます。
そうした点から英語を学んでみるとより言葉の面白さがわかるのではないでしょうか。
【ザ・動物ネタ!】